健康経営とウェルビーイング

健康経営とウェルビーイングウェルビーイング

ウェルビーイングとは
ーウェルビーイングと経営の関係ー

近年、日本の産業界や政治の世界において重要視されはじめている「ウェルビーイング(Well-being)」について、今回はお伝えします。
健康経営とも非常に親和性の高い概念ですので、健康経営を推進するにあたって、ぜひ念頭に置いておかれることをおすすめします。

ウェルビーイングとは、人々の身体的、精神的、社会的に良い状態を表します。
「健康」や「幸せ」よりも広い意味を持ちます。
企業が従業員のウェルビーイングに配慮することで何が起きるのでしょうか?
ここに興味深い調査結果があります。

幸せな従業員(健康で精神的に良好な状態の従業員)は、不幸せな従業員よりも

・創造性が3倍高い
・生産性が1.3倍高い
・欠勤率が41%低い
・離職率が51%低い
・利他的で他人を助ける傾向にある
・チャレンジ精神がある
・仕事への満足度、エンゲイジメント、モチベーション、リジリエンス(危機から立ち直る力)が高い
・出世が早い

といったことが、学術的なエビデンスとして得られています。
*データ参照:ダイヤモンド・オンライン なぜ「幸せな社員」は「不幸せな社員」より創造性が3倍高いのか?
こんなにも?と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません、私も驚きました!

ウェルビーイングが高い状態で働くことは、個人と企業の両方にとって多くの利点をもたらします。
幸せな従業員の定義にある「健康で精神的に良好な状態」、まさにその状態を後押しするのが、健康経営ですね。ウェルビーイングは健康経営より広い概念ですので、健康経営の推進によって、従業員のウェルビーイングを高めることができるといえます。

かつては精神論を抜きにした合理的経営が行われていた時代もありましたが、今の時代では従業員のウェルビーイングを考えない経営は、人権の侵害やハラスメントとなるリスクのほうが高くなっています。
企業が従業員のウェルビーイングの向上に焦点を当て、それをサポートするためのプログラムや施策の導入は、経営の持続可能な発展につながっていくことが分かっていただけるかと思います。

幸せな状態で働くことで、生産性・創造性が高まることが科学的に証明されています。

根性論で働く時代はとっくに終わっています!

幸せに働くためには?

経済学者ロバート・フランクは、他人と比較できる財を地位財、比較できない財を非地位財、と名付けました。
地位財は、金・物・地位などで、これらによる幸福感は長続きしない傾向があると言われています。
慣れや、より上を目指したくなる、といった人間の欲求が影響します。

一方で、非地位財は長続きする財です。心的、身体的、社会的に良好な状態、つまりウェルビーイングが影響すると言われています。
幸せは長続き、してほしいですよね。

では、働くうえでの「幸せ、ウェルビーイング」な状態について考えてみましょう。ウェルビーイングには「心の要因による幸せ」が関わっているという調査結果があります。

【幸せの4つの因子】
①「自己実現と成長」(やってみよう因子)
②「つながりと感謝」(ありがとう因子)
③「前向きと楽観」(なんとかなる因子)
④「独立と自分らしさ」(ありのままに因子)

これら4つの因子が満たされると、人は幸せだと感じるようです。

「とりあえず考えすぎずにやってみよう、なんとかなる!

私らしさを認めてくれてありがとう、幸せ!」

と思うには、自分自身の努力だけでなく、環境もポイントになりそうですね。

自分だけで達成できる因子もありますが、環境によって左右される因子もあります。
出る杭は打たれるような職場環境だと、やってみよう!と思えなくなるでしょうし、
自由に発言できないような風通しの悪い職場だと、ありのままに振舞うことは難しいでしょう。

「幸せに働くには?」

簡単に答えは出ない問いではありますが、ウェルビーイングと健康経営の視点で改善に取り組むのであれば、

  • 精神面:メンタルヘルスに関する対策、組織環境の改善、心理的安全性、働き方や休み方など
  • 身体(健康)面:健康診断の実施とフォロー、食生活フォロー、食育、運動促進施策など

といったテーマで改善に取り組むと、働く人々の幸せ度向上に貢献できるのではないかと思います。
これらの具体的な取り組みについてはそれぞれまた別のコラムでお伝えしてきます。
ウェルビーイングに関する書籍はこちらから

【補足情報】
最後に、ウェルビーイングを構成する5つの要素を紹介します。
*毎年発表される世界幸福度調査にデータを提供しているギャラップ社(アメリカの世論調査研究所)が提唱するものです

Career well-being(キャリア ウェルビーイング)
仕事への満足度のほか、ボランティアや勉強、子育てにおける充実度のことで、5つの要素の中で最も重要だと言われています。人生の大部分を費やしている時間が充実していれば、人生の充実度も高いため、キャリアウェルビーイングの高い人は人生で2倍以上の豊かさを感じているという調査結果もあります。

Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング)

豊かな人間関係や親しい友人をもつこと。自宅でのコミュニケーションや友人との会話やメールなど、社交的な行動を1日1時間以上持つと、幸福を感じてストレスが減るといわれています。

Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)
経済的な幸福度を指す言葉。単に収入の多さだけではなく、他人のためや慈善団体への寄付にお金を使うなどの行為で幸福を感じることが実験によって証明されています。また、外食やアクティビティなどの体験を買うことでより幸福度が高まるといわれており、お金の稼ぎ方だけでなく使い方もファイナンシャルウェルビーイングを高めるうえで重要になります。

Physical well-being(フィジカル ウェルビーイング)
身体的な幸福度のこと。適度な運動をして十分な睡眠をとることで、体が健康になり幸福度が高まります。運動や睡眠でストレスが大幅に解消されることは多くの人が実感しているでしょう。

Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング)
他人やコミュニティに対して影響を与えているという実感を通じて、幸福を感じられるということ。献血をした後に良い気分になるのも一例で、社会や特定の組織に貢献することで、幸福が得られるだけでなく、自信が持てるようになります。

 

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