働き方改革と健康経営

働き方改革と健康経営働き方改革

「働き方改革」、この言葉を社会人ならば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
働き方改革とは、働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。

背景には「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの課題があり、2019年4月より働き方関連法が順次施行されています。
みなさんも、「有給休暇は必ず年5回は取得してくださいよ」と言った通達を受け取ったり配信したりされたのではないでしょうか?それもこの関連法改正の項目の1つ ー労働基準法の改正による、年次有給休暇の確実な取得―です。

働き方改革が目指すもの

私は、働き方改革とは
「適切な労働時間管理と柔軟な働き方の推進」
「多様性の尊重と活用」
を実現することで、一人ひとりのワークライフバランスを改善する取り組みだと理解しています。

厚生労働省のWebサイトでは、働き方改革全体の推進に当たって、ポイントが2つ挙げられています。

①労働時間法制の見直し
働きすぎを防ぐことで、働く方々の健康を守り、多様な「ワークライフバランス」を実現できるようにします。

②雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
同一企業内における正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても「納得」できるようにします。
引用: 厚生労働省Webサイトー働き方改革ー

ポイント①労働時間法制の見直しには「働く方々の健康を守る」とありますので、健康経営との連動制が見えてきますね。
ここからは働き方改革と健康経営の関りについて解説していきます。

健康と働き方改革の関係

なぜ厚生労働省は働き方改革のポイントに、「働きすぎ」を防ぐことを掲げているのでしょうか。それには企業にとってのリスクでもある「過労死」がひとつの要因に挙げられます。
長時間労働の最悪の帰結ともいえる「過労死」に至る基準として、厚生労働省では『週40時間を超える時間外労働、休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなる場合』に、業務と発症との関連性が徐々に強まるとしています。

【過労死の定義ー過労死等防止対策推進法に記載ー】
・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

2022年度の過労死等に関する請求件数は3,486件で、2001年からの経年変化を見てみると基本的には横ばいに推移していますが、「精神障害」については2001年と比較すると9倍弱の水準まで達しています。
◆参照:過労死等に関する労災・公務災害の補償状況|厚生労働省

長時間労働は、疲労とストレスを蓄積させ、脳・心臓疾患のリスクを高め、さらには幸福度を下げるというデータもあります。働く人の心身の健康に関わる大きなリスク要因ということが分かっていただけるのではないでしょうか。

では、働き方改革の推進を経て、長時間労働や過重労働が是正されるとどのようなことが起きますか?

働く人の健康状態が改善され、ストレスや過労からくる病気や心の健康の問題が減少します。
その結果、健康経営用語での生産性向上の指標である「アブセンティーズム」「プレゼンティーズム」の改善も期待できますよ。

働き方改革=長時間労働の是正=健康経営成功??

ここまで読んでくださった方の中には、働き方改革の推進を行う上で、長時間労働を減らせば健康経営にも好影響を与える、と思ってくださる方もいるかもしれません。
ここで1つのアンケート調査結果を見ていきましょう。

長時間労働対策の成果が上がっている企業と、場所に縛られない働き方改革の成果が上がっている企業、どちらも「心の病」の減少傾向が見られますが、どちらのほうがより効果が出たと思いますか?
答えは・・・

「場所に縛られない働き方改革」でした。

「長時間労働対策」よりも、ワークライフバランス施策や場所にとらわれない働き方改革のほうが顕著な差が表れています。コロナ禍によって広まったテレワークや、働き方改革関連法にもあるフレックスタイム制などの活用ですね。働く場所や時間が柔軟になったことで、ワークライフバランスが取れやすくなったのではないでしょうか。

働き方改革、というと長時間労働対策に目がいきがちですが、それ以外の施策にも幅広く取り組むと良いですね!働き方改革と健康経営を掛け合わせて、生き生きと働ける環境づくりをぜひ推進してください。

◆参照:第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果 | | 公益財団法人日本生産性本部

【参考情報】
働き方改革関連法の施行による変更点は、大きく以下の11のポイントです。

1. 時間外労働の上限規制の導入
2. 勤務間インターバル制度の導入促進
3. 年5日の年次有給休暇の取得
4. 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ
5. 労働時間の客観的な把握
6. 「フレックスタイム制」の清算期間延長
7. 高度プロフェッショナル制度の導入
8. 産業医・産業保健機能の強化
9. 不合理な待遇差の禁止
10. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
11. 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

健康経営では、8「産業医・産業保健機能の強化」改正も大きく関与します。
労働安全衛生法の改正により、労働者の健康確保対策の強化および産業医の活動環境の整備など、産業医・産業保健機能の強化が事業者に求められるようになりました。

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